『白いしるし』感想・レビュー・あらすじについて
当記事は『白いしるし』の書評です。
本書は『白いしるし』というタイトルで西かなこ著、ご存知の方もいるのではないでしょうか。
恋の終わりを知ることは人をつよくしてくれるのだろうか?ひりつく記憶が身体を貫く、超全身恋愛小説です。
目次
『白いしるし』とは?
『白いしるし』感想・レビュー
『白いしるし』の著者について
『白いしるし』のまとめ
①『白いしるし』のあらすじ
32歳の独身女性・夏目香織(なつめ かおり)。バーでアルバイトをしながら絵を描く日々を送っている彼女は、過去の失恋ばかりで心に深い傷があった。そのため、新しい恋にも慎重で、誰かにのめりこむことを恐れていた 。
そんなある日、写真家の友人・瀬田(せた)に誘われて訪れた個展で、夏目は「間島昭史(まじま あきふみ)」の真っ白な絵と出会う。その絵に心を奪われ、描いた本人にも直観的な惹かれを覚え、穏やかで静かな恋が始まる──はずだった 。
しかし、間島はいつまでも彼女だけのものではなく、触れるほどに夏目の想いは痛みに変わっていく。恋に落ちる。傷つく。泣く。身体に突き刺さるような感情の嵐を経験した先に、彼女は初めて「恋の終わり」を知る 。
その恋の結末は、鮮やかではないものの、夏目自身の中に小さな光を残す。痛みを知ったからこそ、彼女は少しずつ前へ進む──“恋の終わり”は、果たして彼女をより強く、新しい海へ導くのだろうか?
②『白いしるし』感想・レビュー
32歳って私と同い年なんですが、売れていない絵描きでアルバイトで生計を立てているまともじゃない人でも(失礼)、生活できるんだなと素直に思った。あと、好きな人に振り回されてるのってしんどくないか??20代のときは楽しいかもしれないけど、絶対しんどくない? メンタル大丈夫?って思っちゃいました。
主人公だけでなく、登場人物それぞれが歪んだ恋愛をしているのが特徴的です。主人公・夏目が恋した間島は、種違いの妹を恋人として愛している。他にも、夏目の友人である瀬田は、恋人が置いていった猫をずっと飼い続けており、その猫同士で繁殖させている様子に、気味悪さや愛の歪みを感じます。
好きな人のために無償で展覧会の場所を提供したり、他の女よりお金があることをしれっとアピールしていたりと、なかなかクセの強い登場人物が多いです。
傍から見たらとても仲の良い男女だとしても、お金をちらつかせて関係を続けているカップルや、契約結婚という愛がない形のカップルもいる。今読んでもなかなかパンチが効いた作品だと思います。作品を読み終えたあとに気持ち悪さが残るけれど、リアルな大人の恋愛観に触れることができるのが、この作品の良さでもあります。
③『白いしるし』著者西加奈子について
◎ 主な作品と受賞歴
『さくら』(2005):ベストセラーに 。
『通天閣』(2007):織田作之助賞受賞 。
『ふくわらい』(2013):河合隼雄物語賞受賞 。
『サラバ!』(2015):直木賞受賞 。
『くもをさがす』(2024):ノンフィクション作品として読売文学賞を受賞 。
他にも 『きいろいゾウ』『漁港の肉子ちゃん』『夜が明ける』など多数。
◎ 作風と特徴
作家としてだけでなく、絵描きとしても活動。絵を小説の表紙に使用するなど、視覚表現にもこだわりがある 。
日常や感情の細部を鮮烈かつ繊細に描き、大人の恋愛や人生の苦さ・美しさをリアルに映し出す作風。
◎ 最近の活動
カナダ・バンクーバーへ家族と移住後、乳がん(トリプルネガティブ型)と診断され、抗がん剤治療と両胸摘出手術を経験 。
その体験を綴ったノンフィクション『くもをさがす』では、闘病記録の過程だけでなく、日常への愛や自己との対話を丁寧に描き、多くの読者の共感を呼んでいます 。
④『白いしるし』まとめ
恋愛をしていると、ふとした瞬間に「自分の価値観ってこれでいいのかな?」と不安になること、ありませんか?
そんなときに読んでみてほしいのが、この小説。
登場人物たちの揺れる心や葛藤に触れることで、「あ、自分だけじゃないんだ」「みんな同じように迷ってるんだな」と、自然と心が落ち着いていくのを感じられるかもしれません。
しかも、サクッと読めるボリューム感なので、電車の待ち時間やちょっとした空き時間にもぴったり。
ざわついた心に、静かに寄り添ってくれる一冊になるはずです。
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